エッフェル塔を建設する時、現場のシャン・ド・マースで働いた職人(鉄骨組立、リベット打ち、クレーン操作、木型職人など)は約200人、ピーク時には300人いたとされています。

今日、エッフェル塔の内部で行われたセレモニーに参加してきました。
それは、136年前にこの塔を建て上げた職人たちへの敬意を込めたプレートの落成式です。

ギュスターヴ・エッフェルは1889年、3月31日のエッフェル塔完成の祝典スピーチで、

« Cette tour sera le témoignage du génie des scientifiques et des ouvriers français. »
「この塔は、フランスの科学者と職人たちの才能の証となるだろう。」

という言葉を述べています。それほど、エッフェル塔は単なる設計者の作品ではなく、数百人の無名の職人たちの共同成果であるとギュスターヴ本人が感じていたのでしょう。

その中で、当時いわゆる現場監督で棟梁を務めていたのが、Eugène Milon(ユジェーヌ・ミロン)。彼はエッフェル社の社員で、大工職・現場監督でした。

今回のプレートはそのユジェーヌと仲間の職人たちに敬意を評するためのものとなります。

セレモニーは、エッフェル塔のディレクター、子孫代表のサバン、そして職人組織 **Compagnons du Devoir の代表の挨拶から始まりました。

そして、落成式へ


**フランスには「Compagnons du Devoir(コンパニョン・デュ・ドゥヴォワール)」という、職人を育成する伝統的な組織があります。この組織はいわゆる建築・土木系だけでなく、パン屋さんやケーキ屋さん、革職人や石職人など30余りの職種が属しているそうです。
日本にも師弟関係や見習い制度がありますが、コンパニョンは単に若者を育てるだけでなく、自らの技術と精神を正しく継承することを目的に活動しています。職人たちは互いに連携し、大きなプロジェクトにもチームとして取り組みます。
学生は技能の習得にとどまらず、倫理観・謙虚さ・仲間意識といった「生き方」を学びます。修行の最後には、「chef-d’œuvre(シュフ・ドゥヴル、傑作)」と呼ばれる作品を制作し、それが認められると正式に**コンパニョン(熟練職人)**として仲間入りします。
フランスの職人教育の最高峰の一つとされ、高度な技術教育・国際経験・人格教育を兼ね備えたユニークな制度として、政府や企業からも高く評価されているそうです。


設置されたプレートはこちら↓

名誉と栄光
ユージェン・ミロン、
通称:ソロモンの支柱・ゲパン
自由の徒弟組合の大工職人仲間
1859–1917
そして、
彼の指揮の下で
1887年1月26日から1889年3月31日まで
エッフェル塔を建てた
二つの徒弟組合の仲間たちへ

と小さなプレートながら、彼らに対する敬意が伝わる、すばらしいプレートが設置されました。

なぜ?このタイミングでプレートを?

と思われますよね?実は以前、既にエッフェル塔一階にプレートはあったのだそうです。しかし1984年、ジャック・シラク氏がパリ市長時代(のちにフランス大統領)に行ったエッフェル塔の改修工事の際に紛失してしまい、その後ずっと再建が望まれていたんだそうです。

念願叶ったプレートの再建。

集まったCompagnons du Devoirの皆さんも大変お喜びでした!

もしエッフェル塔を訪れることがあれば、ぜひこのプレートを探してみてください。
そこには、名もなき職人たちの誇りと、フランスのものづくり精神が今も息づいています。

今日も素敵な出会いと学びがありました。メルシー、ギュスターヴ。