エッフェル塔には1889年の開業時から、レストランやカフェといった来訪者を迎えるための施設が整えられています。開業当初、1階には4つの木製パビリオンが建設され、フランス料理、アルザス料理、ロシア料理、オランダ料理を楽しむことができました。時を経てそれらのパビリオンは解体されましたが、形を変えながら、常に上質なレストランサービスが展開されてきました。

現在、エッフェル塔2階にあるのが「Le Jules Verne」。1983年にオープンし、この象徴的な場所にふさわしいガストロノミー体験を提供し続けています。現在キッチンを率いるのはFrédéric Anton氏。クラシックなフランス料理をベースにしながら、現代的で洗練された一皿に仕上げることで知られるシェフです。
店名の「Le Jules Verne」は、19世紀フランスを代表する作家、Jules Verneに由来します。『海底二万里』や『八十日間世界一周』などで知られ、科学と冒険を描いた作品はいまも広く読み継がれています。


今回、この「Le Jules Verne」でランチをいただく機会に恵まれました。
レストランの入口はエッフェル塔南柱にあり、専用の入口から入り、専用エレベーターで2階へと向かいます。

店内は非常に洗練された雰囲気で、ところどころにジュール・ヴェルヌへのリスペクトを感じさせる装飾が施されています。

席に着いてまず目に入るのが、テーブルに置かれた小さな瀬戸物のオブジェ。本の形をしており、それぞれに異なるジュール・ヴェルヌ作品の一節が刻まれています。ゲスト一人ひとりに物語が手渡されるような、さりげない演出です。

料理は言うまでもなく素晴らしく、一皿ごとに緻密に構築された味と美しさが際立ちます。エッフェル塔内では安全上の理由から火の使用に制約があり、一般的なレストランのような調理環境ではありません。そのため、仕込みや温度管理、提供のタイミングに至るまで、細やかな工夫が重ねられています。

そして印象に残るのは、料理そのもの以上に、それを支えるサービスとの一体感です。スタッフの所作や距離感は非常に洗練されており、決して過剰ではないのに、必要な瞬間に自然と満たされる。すべてが静かに調和しています。
Le Jules Verneでの食事は、「食べる」という行為を少し超えた体験でした。空間、時間、そして物語を同時に味わうようなひととき。エッフェル塔という場所だからこそ感じられる特別な時間です。

お食事をご一緒させていただいた、日仏を舞台に、狂言という日本の伝統芸能を伝承・発信している小笠原様ご一家、そしてT様、D様、素晴らしい機会を共有させていただき、ありがとうございました!
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