
エッフェル塔を、北斎の富士山のように描いたフランス人画家がいたことをご存じでしょうか。
その画家は、アンリ・リヴィエール(Henri Rivière, 1864–1951)。
パリに生まれ、画家、版画家、写真家として活動したほか、モンマルトルのキャバレー「シャ・ノワール(黒猫)」では、影絵劇も手がけました。
日本の浮世絵に魅了されていたリヴィエールは、葛飾北斎の《富嶽三十六景》から着想を得て、パリの新しい象徴となったエッフェル塔を描こうと考えます。
こうして1888年から1902年にかけて制作されたのが、36点のカラーリトグラフからなる《エッフェル塔三十六景》です。
作品は1902年、一冊の画集として刊行されました。

北斎の《富嶽三十六景》では、富士山がいつも大きく描かれているわけではありません。
町で働く人々や旅人、橋や舟、日々の暮らしの向こうに、ときには小さく、ときには意外な姿で現れます。
リヴィエールのエッフェル塔も同じです。

塔の建設現場やセーヌ川、モンマルトルの街角、パリの屋根、郊外の風景など、さまざまな場所からエッフェル塔を捉えています。

画面の中心に堂々とそびえることもあれば、遠くの地平線に小さく見えるだけのこともあります。
現在では世界的な観光名所となったエッフェル塔ですが、これらの作品に描かれているのは、塔が誕生して間もない頃のパリです。
新しい時代の象徴だったエッフェル塔が、人々の暮らしのなかに少しずつ溶け込んでいく様子を見ることができます。
今回は、すでにSNSでご紹介した作品のなかから、特に印象的な数点を選んで掲載します。
同じエッフェル塔が、見る場所や距離、季節によってどれほど違う表情を見せるのか、比べながらご覧ください。

《エッフェル塔三十六景》の全作品は、ThreadsとXで順次ご紹介しています。
ブログではお見せしきれない一枚一枚の構図や、そこに描かれた当時のパリについても触れていますので、よろしければそちらもご覧ください。
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